日本のスタートアップはどこへ行く？成長の軌跡とこれからのチャレンジ

スタートアップと聞くと、ちょっとおしゃれで刺激的なイメージがあるかもしれません。シリコンバレーやイスラエルといった海外の成功事例を想像する方も多いでしょう。しかしここ数年、日本のスタートアップシーンも実は大きく動いています。投資額は10年前の約10倍、IPO（株式上場）企業数も増加傾向。そんなポジティブなニュースがある一方で、「十分な資金を集められず成長が停滞する」「ディープテックへの投資がまだまだ足りない」など、課題も山積み。今回は日本のスタートアップの現状と、これからの展望をゆるっと探ってみたいと思います。

この10年で“倍々ゲーム”の投資額

まず注目したいのは、スタートアップ向け投資額が約8,000億円に達し、10年前と比較して約10倍に拡大しているという点です。10倍って聞くと、一昔前に流行ったビジネス書のタイトルみたいですが、本当に投資環境は大きく変わってきています。
IPOを行う企業も年間約100社に増え、そのうち約7割は新興市場に上場しています。こうした数字だけ見ると「日本でもスタートアップってかなり盛り上がってるんじゃない？」と思いますよね。でも実際は、上場しても十分な資金調達ができずに成長が頭打ちになるケースも多いのが現状。お金の面だけでなく、事業拡大をサポートしてくれる体制づくりやグローバル展開のサポートなど、投資以外の部分での支援がまだ手薄という声も聞かれます。

さらに、過去30年間の日本経済全体を見てみると、株式市場の伸び悩みや実質賃金の停滞など、世界と比較して見劣りする部分が少なくありません。経済全体が停滞すると、その影響はスタートアップのような若い企業へもダイレクトに響きます。「日本発のユニコーンをもっと増やしたい！」という機運は高まっているものの、目に見える成果を出すには時間と根気が必要そうです。

政府の5か年計画｜10兆円と10万社のインパクトは？

そんな中、日本政府は「スタートアップ育成5か年計画」を発表し、5年後にスタートアップへの投資額を10兆円規模に拡大するという大きな目標を掲げました。さらに「ユニコーン企業を100社」「スタートアップ企業を10万社」創出するという、ちょっと気合い入りすぎ？と思うくらいのインパクトある数字も出ています。

いったいどうやってそんなに増やすつもりなのか……という疑問はさておき、こうした明確な目標設定は、スタートアップに関わるVC（ベンチャーキャピタル）や事業会社、大学、官公庁などが結束しやすくなるメリットがあります。共通のゴールがあると、みんなで「やるぞ！」と盛り上がるパワーは確かに出やすいですからね。

ただ、投資を受けやすくするための市場改革や、ディープテック分野の研究開発支援など、細かい仕組みづくりも同時に進めなければ、「目標だけが先走って数が揃わなかった」というオチになりかねません。特に大学発スタートアップが育つ土壌づくりや、失敗しても再挑戦しやすい文化を根付かせることはとても重要です。大学や研究機関が持つ最先端技術がしっかりビジネス化につながるよう、業界全体での連携を深める必要があるでしょう。

グローバル視点とテクノロジーの波

スタートアップの世界は常にトレンドが移り変わります。過去数年は、AIやブロックチェーン、クリーンテックなどが注目を集めてきましたが、それに加えて2024年現在は「働き方」「消費の仕方」「つながり方」といった社会の根本的な変化に対応するスタートアップが増えています。リモートワークやサブスク型サービス、オンラインコミュニティなど、数年前なら考えられなかった規模のユーザーと速度で普及しているのが特徴です。

特にAIエージェントの進化は目覚ましく、もはや「SF映画の世界か？」と突っ込みたくなるほど。自律的に環境を認識してタスクをこなすなんて、いよいよロボットが人間の同僚になる時代が来るのかもしれません。こうした最新技術を活用できるかどうかが、スタートアップの競争力のカギを握ることは間違いないでしょう。

一方で、日本国内の投資額が欧米や中国と比べるとまだ低いと指摘されるのも事実。海外市場を意識したプロダクトやサービスを作れるかどうかが、長期的な成長の分かれ道になりそうです。グローバル展開を狙うには、英語でのピッチや現地パートナーとの協業など、越えなければいけないハードルも多いですが、逆に「ここをクリアすれば一気に花開く可能性も大きい」というわけです。日本政府の打ち出した大きな目標が、このあたりの後押しになることを期待したいところですね。

おわりに

こうしてざっと見てみると、日本のスタートアップは一見順調に育っているようでいて、まだまだ課題も多いようです。しかし、10倍に膨れ上がった投資額や政府の大掛かりな支援策は、確実に新しい風を吹き込んでいるとも言えます。
これから大切なのは「課題解決型のイノベーションをどんどん生み出す」こと。国内だけでなく、地球規模の社会課題に挑んでいけるスタートアップを育てるためにも、支援者はもちろん、私たち一般消費者も新しいサービスや技術への関心を高めていくことが大事だなと感じます。次に「日本発のとんでもないユニコーンが世界を席巻」なんてニュースを聞く日も、そう遠くはないかもしれませんよ。