日本政府のスタートアップ支援策で未来はどう変わる?|エコシステム拡大にかける期待と課題

日本政府のスタートアップ支援策で未来はどう変わる?|エコシステム拡大にかける期待と課題
2025年1月29日

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「スタートアップ」という言葉を聞くと、皆さんはどんなイメージを持ちますか? おしゃれなオフィスでキラキラ働く若者たち? それとも、未知のアイデアに情熱を注ぐ“ガレージ起業”のような光景でしょうか。実は今、日本国内でもあらゆる場所や領域で新しいビジネスが次々に生まれているんです。そして、その背中を押すために日本政府が力を入れているのがスタートアップ支援策。投資やマッチング、税制優遇など、多角的なアプローチでスタートアップをサポートし、2030年に向けて大きなイノベーションの波を起こそうとしています。今回は、そんな政府支援の取り組みと、そこから見える日本の未来について考えてみましょう。

2030年を見据えたスタートアップ育成5ヵ年計画

まず押さえておきたいのが、日本政府が「スタートアップ育成5ヵ年計画」のもとで掲げている目標です。2027年までにスタートアップへの投資額を10兆円にするという、ちょっと想像もつかないような大規模目標を据えています。10兆円と聞くと、ニュースでもあまり耳にしないほど巨大なお金。これだけの投資が集まることで、スタートアップは開発や人材採用など大きな挑戦がしやすくなり、結果としてイノベーションの連鎖が期待されているわけです。

この背景には、「日本からもっとユニコーン企業(未上場で企業価値10億ドル以上のスタートアップ)をどんどん誕生させよう!」という強い意志があります。海外に比べるとどうしても数が少なかった日本発ユニコーンを増やし、国際競争で主導権を握れるようにしようというわけですね。かつては「日本で起業するのはハードルが高い」と言われていた時代もありましたが、ここにきて政府が本腰を入れ始めたことで、今まさに勝負をかける空気が漂っています。

J-Startupプログラムと地域エコシステムの盛り上がり

次に注目したいのが、経済産業省が主導する「J-Startupプログラム」の存在です。革新的な技術やビジネスモデルを持つスタートアップを選び出し、海外進出や大企業とのコラボ、投資家とのマッチングなど、幅広い支援を行うのが特徴。グローバルな市場を目指す企業にとっては、こういった政府後押しのプログラムは大きなチャンスと言えます。

さらに、東京や大阪など都市圏だけでなく、スタートアップエコシステム拠点都市として全国の地方都市も整備が進んでいる点も見逃せません。例えば東北地方では、地元大学の研究成果をベースにしたバイオテクノロジー系ベンチャーが盛んになってきたり、九州の自治体がIT企業を誘致し、新たな起業家コミュニティを形成したりと、実は各地で面白い動きが起きているのです。こうした地域発ベンチャーが世界に羽ばたくケースも増えれば、「スタートアップ=都会の若者」という固定観念も変わりそうですよね。

技術革新が生み出す新しいスタートアップ像

昨今の政府支援策と切っても切り離せないのが、AIやブロックチェーン、クリーンテックなどの新技術の進歩です。AIの発達によって莫大なデータを分析しやすくなり、ブロックチェーン技術が生産履歴や物流の透明性を大幅に高め、クリーンテックが環境とビジネスを両立する道を開く――こうした流れがスタートアップのビジネスモデルにも大きなインパクトを与えています。

政府としても、こうした先端技術を活用する企業に積極的に注目し、資金調達のしやすさや研究開発の場を提供しています。たとえば最近では、AIを使ったサービスの実証実験を支援する取り組みが拡充されたり、クリーンエネルギーを軸にしたグリーン成長戦略が打ち出されたりしているんです。ここでスタートアップが活躍すれば、日本が技術大国として再び注目を集める日が来るかもしれません。

グローバル展開とオープンイノベーションで競争力アップ?

海外に目を移すと、スタートアップ支援策に力を入れている国はたくさんあります。シリコンバレーで有名なアメリカはもちろん、イスラエル、シンガポール、中国、欧州各国なども独自のエコシステムを整え、グローバル市場をリードしようと躍起です。日本もそこに遅れを取らないように、オープンイノベーションをキーワードに大企業や大学との連携強化、そして国際的なネットワークづくりを進めています。

特に日本では、長年培った技術力や大企業の豊富なリソースが強み。そこにスタートアップの柔軟性やスピード感を掛け合わせれば、意外な化学反応が起こる可能性も高いんです。大企業側も「すべてを自社で開発するのは難しいから、外部のアイデアを取り入れたい」と考えるようになり、スタートアップは「大企業のネームバリューや資金力を活用して事業をスケールしたい」と思っている。まさにウィンウィンの関係ですよね。そんな両者の連携が国境を超えれば、日本発のサービスが世界でヒットする未来も夢ではないでしょう。

これからの課題と期待

もちろん、課題がないわけではありません。スタートアップの数が増えれば、その分競争が激しくなるので、事業を継続できる企業とそうでない企業の二極化が進む可能性もあります。また、都市部と地方部の情報格差や、研究者・技術者の国際流出なども懸念材料です。とはいえ、政府が積極的に投資を呼び込み、自治体や大学、大企業、ベンチャーキャピタルが連携することで、ひと昔前と比べればはるかに起業しやすい環境が整ってきたのは間違いありません。

「スタートアップってなんか自分には縁がない世界……」と思う方もいるかもしれませんが、新しいサービスやビジネスモデルは、私たちの生活をどんどん便利に、そして面白く変えていきます。5年後、10年後には「あれ、いつのまにか日本の〇〇って世界で大注目になってるじゃん!」なんてニュースを見る機会が増えるかもしれません。もしかすると、あなたの身近にいる友人や家族が、次の大ヒットサービスを生み出す起業家になる可能性だってあるんです。

まとめ

日本政府が掲げる大規模なスタートアップ支援策は、投資額10兆円を目指す意欲的な目標や、J-Startupプログラム、地方エコシステムの整備など、さまざまな角度から「未来のイノベーション」を後押ししています。AIやブロックチェーンなどの先端技術がさらに進化すれば、新しいビジネスモデルも続々と生まれ、人々の暮らしや働き方を大きく変えていくことでしょう。
政府や大企業が本腰を入れることで、もしかしたら10年後には「日本から世界的なユニコーンが当たり前に誕生する時代」が来るかもしれません。そんな明るいシナリオを思い描きながら、私たちも「スタートアップって面白そうかも?」とちょっとでも関心を持ってみると、意外なところで未来のサービスに出会えるかもしれませんね。

芝先 恵介

芝先 恵介

メンター|生成AIスペシャリスト

外資系業務ソフト会社を経て2002年に起業、代表に就任。2013年に会社を売却し、翌年からスタートアップや大企業の新規事業立ち上げ支援に尽力。大学や公的機関での非常勤講師、DXアドバイザー、中小企業アドバイザーとしても活躍中。現在は、(株)01STARTを設立し、新規事業開発や営業DXのコンサルティング、生成AIに関するセミナーに数多く登壇。

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