「妄想」が世界を変える？眠れる技術を起こす新しいプラットフォーム

あなたの身の回りにも、実は「お宝」が眠っているかもしれません。押入れの奥で眠っているゲーム機、読まれることなく本棚に並ぶ参考書、スマホの写真フォルダに溜まったままの動画たち…。実は、日本の大企業にも同じような「宝の持ち腐れ」状態が起きているんです。

それは「特許」という名の技術たち。毎年約30万件も生まれる特許のうち、なんと半分がビジネスに使われることなく眠り続けているというから驚きです。でも最近、そんな「寝ている技術」を「妄想の力」で起こそうとする、ちょっと変わったプラットフォームが注目を集めています。

「知財ハンター」が掘り起こす隠れた宝物

「知財図鑑」──この名前だけ聞くと、お堅い技術情報サイトを想像するかもしれません。でも実際は、まるで宝探しゲームのような面白さに満ちた場所なんです。

ここで活躍するのが「知財ハンター」と呼ばれる人たち。彼らは大学の研究室や企業の研究所に足を運び、「こんな面白い技術があるのに、なぜ世に出ていないの？」という疑問を抱きながら、眠れる技術を積極的に掘り起こしています。

例えば、パナソニックには5年前、10年前に開発されたけれど、当時は出番がなかった技術がたくさん眠っているそうです。研究って時間がかかるものだから、完成した頃には世の中の状況が変わってしまって、当初想定していた使い道がなくなってしまうことがあるんですね。コロナ禍のような予期せぬ出来事も、技術の運命を大きく左右します。

でも知財ハンターたちは言います。「当初の用途はダメでも、全く違うところに活用法があるかもしれない」と。これって、古い服をリメイクして新しいファッションアイテムに生まれ変わらせるのと似ていませんか？

「妄想」という名の魔法で技術が変身

ここからが知財図鑑の真骨頂です。普通の技術紹介サイトなら「この技術の仕様は〇〇で、性能は××です」という無味乾燥な説明で終わってしまいます。でも知財図鑑は違う。「妄想」という魔法をかけるんです。

例えば、NECが持っていた「1秒間に1,000フレームで画像を撮影・分析できる技術」。これまでは工場でレアメタルを検出するという、なんだか地味な用途で使われていました。

でも知財図鑑のクリエイターたちが妄想したのは、こんな未来です：「この技術をスマートグラスに載せたら、普段の生活で無意識に見た景色の中から、自分の好みに合うものだけを後から振り返れるんじゃない？」

これ、なんだかSF映画みたいですよね。でも妄想で終わらなかったのがすごいところ。この発想をイラスト化して発信したところ、大阪大学の研究者から「人が何を美しいと感じるかを分析するアルゴリズムを研究している」という情報が寄せられたんです。

結果的に、NECの画像解析技術、スマートグラス、そして大阪大学の「心的テンプレート」研究が融合した「SHUTTER Glass」という新しいコンセプトが誕生しました。一つの妄想が、まったく違う分野の研究者たちを繋いだんです。

もう一つ面白い例が、株式会社タイカの「αGEL（アルファゲル）」という素材。これまでは工業製品に使われていたゲル素材でしたが、「質感を自在に変えられる」という特性に注目した知財図鑑は、「動物園で触れない動物の手触りを体験できる展示ができるんじゃない？」と妄想しました。

残念ながら動物園での実現は叶いませんでしたが、今度は小笠原村観光局との連携が生まれ、天然記念物のウミガメの卵やイルカの肌質感を再現した「さわれるオガサワラ」という観光グッズの製作につながったんです。工業素材が観光業界で花開くなんて、誰が予想できたでしょうか？

AIが加速する「アイデアの大量生産」時代

こうした人間の妄想力に、最近AIという強力な助っ人が加わりました。それが「ideaflow」というツールです。

従来、特許を読み解いて新しい活用方法を考えるのは、とても時間のかかる作業でした。特許の文書って、文字がぎっしり詰まった難解なものが多いんです。まるで法律の条文を読むような感じで、技術者以外には理解するのが大変。

でもideaflowなら、特許番号やGoogle PatentsのURLを入力するだけで、内容をコンパクトに要約してくれます。そして「これを教育に使いたい」「スポーツで使えないか」といった分野を選ぶと、AIが大量のビジネスアイデアを生み出してくれるんです。

しかも、単なる空想ではなく、「このアイデアの実現可能性は？」「市場性は？」「リスクは？」まで5段階で採点してくれる優れもの。まるで「ドラえもんのひみつ道具」みたいですね。

2024年6月のβ版リリース後、なんと500社以上から問い合わせがあったというから、企業の関心の高さがうかがえます。現在は大阪・関西万博の住友館でも、この技術が活用されているそうです。700件を超える住友グループの最先端技術をデータベース化し、AIで未来のアイデアを創出する展示に使われているとか。

「専門知識の民主化」で広がる可能性

知財図鑑が目指すのは「専門知識の民主化」。難しい特許情報や最先端研究を、小学生でも理解できるようにわかりやすく伝えることです。

考えてみてください。ハーバード大学の最先端研究を小学生が理解できたら、大人では思いつかないような斬新なアイデアが生まれるかもしれません。子どもの自由な発想力と最新技術が出会ったら、どんな化学反応が起きるでしょうか？

実際、ideaflowは世界中の特許にアクセス可能で、米国や中国の特許も日本語に翻訳して活用できます。言語の壁を越えて、世界中の「眠れる技術」と「困っている人」を繋げる可能性を秘めているんです。

大企業だけでなく、中小企業や大学の技術も対象です。特許の数は少なくても、唯一無二の技術やノウハウを持っている小さな企業はたくさんあります。そうした技術をideaflowでアイデアに変換すれば、思いもよらない市場で花開くかもしれません。

AIと人間、最強のコンビネーション

知財図鑑の荒井編集長は、AIと人間の役割分担について興味深いことを言っています。

「AIは大量のアイデアを生み出す力を持っていますが、最終的にそのアイデアを採用し事業化するのは、情熱を持った人間です。AIが作ったアイデアだけではなかなか判断ができないことが多いですが、大量に作れるというアドバンテージを活かし、とにかく手を広げていろんな可能性を探ってみる。その上で、『これをやってみよう』と決めるのは人間」

これって、料理に例えるとわかりやすいかもしれません。AIは冷蔵庫の中身から無数のレシピを提案してくれるシェフみたいなもの。でも最終的に「今日はこれを作ろう」と決めて、実際に調理するのは人間なんです。

AIの「大量生産能力」と人間の「直感・情熱・決断力」。この組み合わせが、これからのイノベーションを加速させそうです。

まとめ：技術とアイデアが出会う新しい時代

長年眠り続けていた技術たちが、「妄想」と「AI」という新しい触媒によって、続々と実用化への道を歩み始めています。

考えてみれば、スマートフォンも最初は「電話をかけるのに画面を触るなんて」と思われていました。でも今では生活に欠かせない存在です。インターネットだって、最初は「パソコン同士をつなげて何になるの？」という声もありました。

イノベーションって、既存の技術と新しい発想の「意外な出会い」から生まれるものなのかもしれません。工場で使われていた技術が観光業界で活躍したり、画像解析技術がファッションアプリに応用されたり。

知財図鑑のような取り組みが広がれば、私たちの身の回りにも、もっと便利で楽しい技術が生まれてくるかもしれません。そして何より、「妄想すること」が新しい価値を生み出す時代になったというのは、なんだかワクワクしませんか？

あなたも今度、日常の中で「これ、もっと○○だったらいいのに」と思うことがあったら、それは立派な「妄想」の始まり。その妄想が、いつか世界を変える技術と出会う日が来るかもしれませんよ。

参考：ユニコーンアイ「妄想とAIで眠っている技術が覚醒…革新的な知財活用プラットフォーム」（2025年5月15日）