AI面接官 vs. AI応募者の終わりなき戦い!就活戦線異常アリ

AI面接官 vs. AI応募者の終わりなき戦い!就活戦線異常アリ

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AI面接官 vs. AI応募者の終わりなき戦い!就活戦線異常アリ

みなさん、就職活動って今どんな感じですか?「履歴書を手書きで書いて、面接では緊張しながら自己PRを…」なんて、もはや昔話になりつつあるかもしれません。なぜなら今、就活の現場では「AI面接官」と「AI応募者」という、まるでSF映画のようなガチンコバトルが繰り広げられているからです。

人間そっちのけで、AIがAIと戦っている──そんな不思議な光景が、私たちの身近な就職活動で実際に起きているんです。今回は、この現代の「就活戦争」の実態を、ちょっとユーモアを交えながら覗いてみましょう。

応募書類の「津波」がやってきた!

まず、この異常事態のきっかけから話しましょう。アメリカ・ユタ州の人事コンサルタント、ケイティ・タナーさんが体験した出来事は、まさに現代の就活カオスを象徴しています。

彼女が「完全リモート勤務、IT企業、必要経験はたったの3年」という、確かに魅力的な求人をリンクトインに投稿したところ、なんと12時間で400件、24時間で600件、数日後には1200件もの応募が殺到!結果的に求人を取り下げることになったものの、3か月経った今でも履歴書の山と格闘しているとか。

「まるで洪水ですよ。まさに異常事態です」と彼女が嘆くのも当然です。リンクトインのデータによると、応募書類の数は1年で45%以上も増加し、今や1分間に平均1万1000件の応募が流れ込んでいるというから驚きです。

この「応募書類の津波」を引き起こしているのが、生成AIツールの普及です。今や、ChatGPTに求人票をコピペすれば、必要なキーワードを全部盛り込んだ履歴書を自動作成してくれる時代。さらに上級者(?)になると、求人検索から応募まで全部やってくれるAIエージェントにお金を払って、完全自動化している人もいるんです。

確かに便利だけど、これじゃあ採用担当者が「本当に適格で意欲がある人物」を見分けるのは至難の業。似たり寄ったりな履歴書ばかりが届いて、人事の人たちは頭を抱えているわけです。

企業もAIで応戦!「Ava Cado」って誰?

さて、この非常事態に企業側も黙ってはいません。「AIが来るならAIで返す」とばかりに、採用プロセスにもAIを導入し始めています。

特に面白いのが、ファストフードチェーン「チポトレ」の事例。彼らが開発した「Ava Cado」(アボカドとかけてるセンス、なかなか良くないですか?)という独自のAIツールは、チャットによる応募者のスクリーニングと、選考スケジュールの自動調整を行い、採用プロセスを75%も短縮したというから驚きです。

他にも、動画面接サービス「HireVue」のように、AIが回答を採点して候補者をランク付けするサービスも人気。もはや人間の面接官の出番はどこに…?

でも、ここで終わらないのが現代の就活戦争。応募者側も、AIの力を借りながら面接を受けるという「ズル」(というか、もはや必要なスキル?)ができるようになったため、企業はさらなる対策を迫られています。

一部の企業では、採用プロセスの初期段階で、応募者のスキルの自動評価を実施。パターン認識やワーキングメモリなどの能力を測るゲームや、EQや変化を起こす力を見るための「バーチャル試用期間」といった、まるでゲームのような機能まで登場しています。

結局、元採用担当者でニュースレター「Recruiting Brainfood」を配信するハン・リーさんが言うように、「AI対AIの戦い」になってしまったわけです。

「偽装応募」という新たな問題

さらに事態を複雑にしているのが、「偽装応募」の問題。今年1月、米司法省は北朝鮮国籍者を米企業のリモートIT職に送り込もうとする計画を起訴したと発表しました。これは極端な例かもしれませんが、偽名による応募は確実に増えているようです。

ガートナーのHRテックアナリスト、エミ・チバさんは「偽装応募の報告は増え続けている」と語り、4月に発表されたレポートでは「2028年には応募者の約4人に1人が偽物になる」という衝撃的な推計まで出ています。

もはや「この応募者、実在する人物なの?」から確認しなければならない時代が来ているんです。採用担当者の皆さん、お疲れ様です…。

こうした状況を受けて、リンクトインも昨年10月にAIエージェント機能を投入。フォローアップメッセージの自動作成や、チャット内容の精査、有力な応募者の提案など、数々の機能でマッチング精度を高めようとしています。プレミアム会員向けの新機能では、潜在的な応募者のスキルと求人情報の適合度を可視化し、適合度の低い応募を10%減少させたとか。

でも、AI採用には偏見を生む恐れがあり、訴訟や各州の規制は増加の一途。EUのAI法では、最も厳しい制限を伴う「高リスク」カテゴリーに採用を分類しています。便利だけど、使い方を間違えると大変なことになりそうです。

終わりなき「イタチごっこ」の真実

ここで重要なのは、この問題の本質を理解することです。実は、「応募者がAIを使うこと」自体は問題ではありません。むしろ、AIを上手に使いこなせるスキルこそ、多くの企業が求めているものなんです。

問題は、雑な(不適切な)やり方でAIを使う応募者が増えたために、本当の適格者が見分けにくくなっていることにあります。でも、採用代行会社「Syndicatebleu」のマネージングディレクター、アレクサ・マルシアーノさんが指摘するように、企業がAIによる応募者のふるい分けを行っている以上、求職者がAIを使うのも致し方のないことなんです。

「せっかく時間をかけて履歴書を作成しても、AIではじかれるのでは意味がない。求職者たちは、そこにいら立っている」

確かに、人間が一生懸命書いた履歴書がAIに秒殺されるって、なんだか切ないですよね。

大学で技術系の就職活動支援を行っているキャリアコーチのジェレミー・シフェリングさんは、当面はこの「イタチごっこ」が続くだろうと予測しています。

「学生たちは、追い詰められるほど自動化ツールに頼るようになる。そのたびに、採用側も、ますますハードルを上げるだろう」

まさに終わりなき戦いですね。

結局、人間らしさが最強なのかも

さて、この異常事態はどこに向かうのでしょうか?

つまるところは、双方が信頼性を確立するしかありません。でも、多くの人がその認識に到達するまでに、膨大な時間と労力、そしてお金が浪費されることになるでしょう。

今の就活市場を見ていると、AIの便利さに頼りすぎて、本来の「人と人とのつながり」が見失われているような気がします。確かにAIは強力なツールですが、最終的に働くのは人間です。そして、一緒に働きたいと思うのも、やっぱり人間なんですよね。

もしかすると、このAI対AIの戦いが激化すればするほど、逆に「人間らしさ」や「本物の熱意」が際立って見えるようになるかもしれません。履歴書をAIに書かせるのは簡単ですが、本当の自分の想いや経験を伝えるのは、やっぱり人間にしかできないことですから。

就活中の皆さん、AIを使うのも良いですが、最後は自分の言葉で、自分の想いを伝えることを忘れないでくださいね。そして企業の皆さんも、AIの便利さに頼りすぎず、人間の直感も大切にしてください。

この「AI面接官 vs. AI応募者」の戦いは、きっとまだまだ続くでしょう。でも、その中でも本物の人間関係を築いていくのが、きっと一番の近道なのかもしれませんね。

(参考:The New York Times、NewsPicks等の報道より)

芝先 恵介

芝先 恵介

メンター|生成AIスペシャリスト

外資系業務ソフト会社を経て2002年に起業、代表に就任。2013年に会社を売却し、翌年からスタートアップや大企業の新規事業立ち上げ支援に尽力。大学や公的機関での非常勤講師、DXアドバイザー、中小企業アドバイザーとしても活躍中。現在は、(株)01STARTを設立し、新規事業開発や営業DXのコンサルティング、生成AIに関するセミナーに数多く登壇。

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