AIで稼げているのは実は5%だけ?〜華やかなAIブームの裏にある意外な現実〜

AIで稼げているのは実は5%だけ?〜華やかなAIブームの裏にある意外な現実〜
2025年9月2日

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「AIで業務効率化!」「生成AIで売上アップ!」なんて言葉、最近よく聞きますよね。テレビでも雑誌でも、まるでAIを導入すれば会社が劇的に変わるかのような話ばかり。でも、ちょっと待ってください。実は、AIに投資している企業の95%が「全然儲かってない」という衝撃の調査結果が発表されたんです。

え、95%も?そう、あの有名なMIT(マサチューセッツ工科大学)が調べた結果なんです。今回は、このちょっとショッキングな調査結果を通して、AIブームの「本当の姿」を一緒に覗いてみましょう。

95%の企業がAI投資で「ゼロ円」という現実

まず、このMITの調査がどれくらいすごいかというと、300ものAI導入プロジェクトを分析したガチの研究なんです。そして出てきた結果が、タイトルにもある通り「95%の組織でリターンゼロ」。

企業がジェネレーティブAI(いわゆる生成AI)に投資した金額は、なんと300億〜400億ドル。日本円にすると約4兆〜5兆円という、もう想像もつかないような巨額です。それなのに、ほとんどの会社が「あれ?全然効果ないじゃん…」という状況になっているわけです。

考えてみてください。みんながiPhoneやAndroidを持っているのと同じように、今やChatGPTやその他のAIツールも当たり前の存在になりつつありますよね。でも、個人で「なんか便利だな〜」と思うのと、会社で「これで利益が上がる!」というのは、まったく別の話だったということです。

調査では「AIの分断」という言葉が使われていますが、要するに「期待」と「現実」のギャップがあまりにも大きすぎるということ。まさに、SNSの写真と実物の違いみたいなものかもしれません(笑)。

大企業ほどAIで失敗している?その理由とは

さらに面白いのが、大企業ほどAI導入で苦戦しているという点です。調査によると、大手企業の約80%がChatGPTやMicrosoft Copilotなどを試してみたものの、本格的に使い続けているのはわずか5%だけ。

これ、なんだか意外じゃないですか?お金も人材もたくさんある大企業の方が、AIを上手く活用できそうなのに。でも現実は逆で、むしろ大きな会社ほど「AIプロジェクトの墓場」になっているんです。

その理由として、調査では4つのパターンが挙げられています:

1. 限定的な変革:8つの主要業界のうち、本当に変化したのはメディアとコンサルティング業界だけ 2. 大企業のパラドックス:試すのは得意だけど、続けるのが下手 3. 投資の偏り:派手な機能ばかりにお金をかけて、地味だけど効果的な部分を無視 4. 内製vs外注問題:自分たちで作るより、既存のツールを買った方が成功率2倍

特に4つ目は興味深いですよね。「うちの会社専用のAIを作ろう!」と意気込むより、「ChatGPTを上手く使おう」という方が、実は2倍も成功しやすいんです。これって、料理に例えると「一から調味料を作る」より「市販の調味料を上手く使う」方が美味しい料理ができる、みたいな感じでしょうか。

「AIは便利だけど、儲からない」の正体

では、なぜこんなことになっているのでしょうか?実は、現在のAIには大きな「弱点」があるんです。

それは「学習しない」ということ。え?AIって学習するものじゃないの?と思うかもしれませんが、ここでいう学習は「その会社の仕事のやり方を覚える」という意味です。

例えば、新入社員が入ってきたとき、最初は何もできませんが、だんだん会社のルールや文化を覚えて、即戦力になっていきますよね。でも今のAIは、毎回「初日の新入社員」状態なんです。どれだけ使っても、その会社特有の事情や過去のやりとりを覚えてくれない。

だから「メールの下書きを作る」「資料をまとめる」みたいな単純作業では便利だけれど、「この案件、去年も似たようなことがあったから、あの時の対応を参考に…」みたいな、複雑で重要な仕事では使えないわけです。

調査でも「個人の生産性は上がるけど、会社の利益には直結しない」と指摘されています。つまり、AIは「ちょっと便利な道具」の域を出ていないということなんですね。

AIバブル崩壊の予兆?業界のトップが語る本音

実は、この調査結果が発表される少し前に、OpenAI(ChatGPTを作った会社)のCEOであるサム・アルトマンが、かなり正直な発言をしていました。

「投資家たちはAIに対して過剰に興奮している段階にある?答えはイエス」 「でも、AIは長期的に見れば最も重要な技術?これもイエス」

要するに「今はちょっと盛り上がりすぎかもね」と、AI業界のトップ自らが認めちゃったんです。これ、かなり勇気のいる発言ですよね。

この発言の後にMITの調査結果が出たものだから、投資家たちの間では「もしかして、AIバブルって本当に弾けるかも?」という不安が広がりました。実際、NVIDIA(AI用のチップを作っている会社)やMeta(Facebook)などの株価も一時的に大きく下がりました。

アメリカの投資情報誌バロンズでは「大手テック企業の株価が高すぎるのでは?」という議論が起きているとも報じています。株式市場全体の時価総額増加のうち、AI関連企業が43%も占めているという集中ぶりに、さすがに「これ、大丈夫?」という声が出始めているんです。

でも、AIの未来は本当に暗いの?

ここまで読むと「AIって結局ダメじゃん」と思うかもしれませんが、実はそうでもありません。調査結果をよく見ると、5%の企業は「数百万ドルの価値」を生み出していることも分かっています。

つまり、使い方次第では、AIは本当にすごい効果を発揮するということ。問題は「どう使うか」なんです。

成功している企業の特徴を見ると、以下のようなパターンがあります:

  • 既存のツールを上手く活用している(自作しない)
  • 個人の作業効率化から始めて、徐々に拡大している
  • AIに過度な期待をせず、限定的な用途で使っている
  • 地味だけど効果の高い業務(バックオフィス)にも注目している

要するに「AIで会社が劇的に変わる!」という派手な期待より、「AIで少しずつ楽になろう」という現実的なアプローチの方が成功しやすいということですね。

まとめ:AIブームとの上手な付き合い方

今回のMITの調査結果は、確かにショッキングでした。でも、これは「AIが使えない」という話ではなく、「期待値を調整しよう」というメッセージだと受け取るべきかもしれません。

私たちが普段スマホを使うとき、「これで人生が変わる!」なんて思いませんよね。でも、確実に生活は便利になっています。AIも同じで、劇的な変化ではなく、じわじわとした改善を期待する方が現実的なのかもしれません。

投資家たちが「AIバブル」を心配するのも当然ですが、技術そのものの価値がなくなるわけではありません。きっと時間をかけて、本当に価値のあるAI活用法が見つかっていくはずです。

私たち一般ユーザーとしては、「AIすごい!」というニュースに踊らされすぎず、でも新しい技術の可能性は楽しみながら、上手にAIと付き合っていけばいいのではないでしょうか。

何事も、期待しすぎは禁物。でも、可能性を信じることは大切。そんなバランス感覚が、AI時代を生き抜くコツなのかもしれませんね。

芝先 恵介

芝先 恵介

メンター|生成AIスペシャリスト

外資系業務ソフト会社を経て2002年に起業、代表に就任。2013年に会社を売却し、翌年からスタートアップや大企業の新規事業立ち上げ支援に尽力。大学や公的機関での非常勤講師、DXアドバイザー、中小企業アドバイザーとしても活躍中。現在は、(株)01STARTを設立し、新規事業開発や営業DXのコンサルティング、生成AIに関するセミナーに数多く登壇。

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