「大学出てれば安心」はもう古い?AIが変える就職事情の新常識

「大学出てれば安心」はもう古い?AIが変える就職事情の新常識

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「大学を出ていれば就職は安心」って、昔からよく言われてきましたよね。でも、どうやらその常識が大きく揺らぎ始めているようなんです。

アメリカで起きている「大卒なのに就職できない」現象が、実は日本にとっても他人事ではない理由を一緒に考えてみませんか?

「学歴神話」の終焉?データが示す驚きの現実

まず、アメリカで起きている現実を見てみましょう。ショーン・ウィットマイヤーさんという37歳の男性の話から始まります。彼は建築とプロダクトデザインで10年以上の経験があり、コーディングもできて、修士号を2つも持っている、まさに「エリート街道」を歩んできた人です。

ところが、彼は1年半も定職に就けていません。しかも「近所のボードゲーム店でさえ働けない」という状況に陥っています。なぜって?「資格過剰」だと断られるからです。

もっと衝撃的なデータがあります。アメリカでは、半年以上仕事に就けない「長期失業者」のうち、大卒者が占める割合が10年前の約20%から30%超に急上昇しているんです。つまり、今や長期失業者の3人に1人が大学卒業者なのです。

これって、私たちが当たり前だと思っていた「勉強すれば良い仕事に就ける」という図式が崩れつつあることを意味しているのかもしれません。

AIと自動化が奪う「頭脳労働」の現実

では、なぜこんなことが起きているのでしょうか?その答えの一つが、AI(人工知能)と自動化の急速な進歩です。

従来、AIや機械といえば工場の肉体労働を代替するものだと思われがちでした。でも実際は、むしろ大卒者が従事するような「頭脳労働」の方が、AIに置き換わりやすいケースが多いんです。

記事に登場するウィットマイヤーさんも、こんなふうに語っています。「クロードやチャットGPTの無料版があれば、私がやっていた仕事のかなりの部分はできる」と。彼がやっていた建築関連のコーディング作業は、今や専門知識の少ない人でもAIの助けを借りて実行できるようになったというのです。

別の例では、企業の顧問弁護士として契約書のチェックをしていたシャーリーン・チェンさんという女性が登場します。彼女も2024年春に解雇されましたが、多くの企業が契約書の処理を自動化するソフトを導入しているため、彼女のような専門職の需要が減っているのです。

採用管理システム「インディード」のデータによると、大学の学位を必要とする求人の割合は2019年以降約6%も減少しています。これは決して小さな数字ではありません。

「過度な楽観」が招く就職の落とし穴

興味深いのは、専門家が指摘する「大卒労働者の過度な楽観性」という問題です。

チューリッヒ大学のアンドレアス・ミューラー教授によると、大卒労働者は高卒以下の労働者よりも、実は業界が縮小している時には仕事を得るのに苦労する可能性があるといいます。なぜなら、高卒以下の労働者の方が、その分野特有のスキルやコネクションを持っている場合が多いからです。

一方で、大卒者は「きっと良い仕事が見つかるだろう」と楽観的になりがちで、業界の変化に気づくのが遅れてしまうことがあるのです。

記事に登場するジェレミー・デービスさんは、ニールセンのエンジニアリング担当シニアディレクターを解雇された後、早い段階で受けた仕事のオファーを「もっと良い仕事があるかも」と断ってしまいました。結果として、11カ月間で1200件の求人に応募し、17回面接を受けても、まだ仕事が見つからない状況です。

この話、他人事じゃないなって思いませんか?私たちも「もう少し待てばもっと良い条件の仕事が見つかるかも」って考えがちですが、それが裏目に出るケースもあるということです。

変化する労働市場で生き残るには?

じゃあ、私たちはどうすればいいのでしょうか?絶望する必要はありません。変化に対応する方法はいくつかあります。

1. 柔軟性を持つこと

まず大切なのは、自分のキャリアプランに柔軟性を持つことです。「自分は○○の専門家だから、この分野でしか働けない」という固定観念を捨てて、隣接する分野にも目を向けてみる。そうすることで、選択肢が広がります。

2. AIとの共存スキルを身につける

AIに仕事を奪われるのではなく、AIを使いこなすスキルを身につけるという発想の転換も重要です。ChatGPTやClaude、その他のAIツールを積極的に学んで、それらを使って効率的に仕事をこなせる人材になる。AIを恐れるのではなく、味方にするという考え方ですね。

3. 人間らしさを武器にする

どんなにAIが発達しても、人と人とのコミュニケーション、創造性、共感力といった「人間らしさ」は簡単には代替できません。これらのソフトスキルを磨くことで、AIにはできない価値を提供できる人材になれます。

4. 継続的な学習習慣

技術の進歩が速い現代では、「学校を卒業したら勉強終了」ではなく、生涯にわたって学び続ける姿勢が必要です。オンライン講座や資格取得など、常に新しいスキルをアップデートしていく習慣を身につけましょう。

まとめ:不安な時代だからこそ、前向きに変化を捉えよう

確かに、今の時代は不安要素がたくさんあります。でも、考えてみてください。人類は産業革命の時代から、テクノロジーの進歩に合わせて新しい働き方を見つけてきました。今回のAI革命も、きっと同じです。

記事に登場したウィットマイヤーさんも、趣味のボードゲーム制作をビジネスにして、新しい道を切り開いています。クラウドファンディングで10万ドル以上を集めて、ゲーム制作で利益を上げ始めているんです。

大切なのは、変化を恐れるのではなく、変化の中にチャンスを見つける眼を持つこと。そして、常に学び続け、適応し続ける柔軟性を保つことです。

「大学を出れば安心」という時代は確かに終わりつつあるかもしれません。でも、それは同時に「学歴に関係なく、価値を提供できる人が評価される時代」の始まりでもあります。

みなさんも、この変化を前向きに捉えて、自分なりの新しいキャリアパスを見つけてみませんか?きっと、想像もしていなかった面白い道が開けるはずです。


参考:The New York Times「【AI直撃】「大卒」の就職先が、消失し始めている」(2025/9/20)

芝先 恵介

芝先 恵介

メンター|生成AIスペシャリスト

外資系業務ソフト会社を経て2002年に起業、代表に就任。2013年に会社を売却し、翌年からスタートアップや大企業の新規事業立ち上げ支援に尽力。大学や公的機関での非常勤講師、DXアドバイザー、中小企業アドバイザーとしても活躍中。現在は、(株)01STARTを設立し、新規事業開発や営業DXのコンサルティング、生成AIに関するセミナーに数多く登壇。

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