AIの頭の中を覗いてみよう!—— 私たちの思考力を助ける4つの方法

AIの頭の中を覗いてみよう!—— 私たちの思考力を助ける4つの方法
2025年5月14日

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最近、「AIエージェント」という言葉をよく耳にしませんか?OpenAIやChatGPTの話題はもちろん、中国企業が開発したManusという新しいAIエージェントも注目を集めています。でも、ちょっと待って…AIエージェントって何?そして、そもそもAIはどうやって「考えて」いるの?

今回は、AIの「頭の中」を覗いてみましょう。スマホを使ったり、SNSを見たりする私たちの日常に、どんどん入り込んでくるAIの思考パターンを知ることで、AIをもっと上手に活用するヒントが見つかるかもしれませんよ。

AIエージェントって何者?

まず基本中の基本。AIエージェントとは、簡単に言うと「人が依頼したことを自分で考えて実行するAI」のこと。「調べものをして」とか「予定を立てて」とか頼むと、人間のように考えながら作業してくれるAIです。

でも不思議じゃないですか?AIはどうやって「考えて」いるのでしょう?実は、AIには「思考のフレームワーク」と呼ばれる、考え方の型があるんです。今回は、その中でも代表的な4つを紹介します。

AIの4つの思考パターンを知ろう

1. 思考の連鎖(Chain of Thought)—— 順番に考える

「思考の連鎖」は、その名の通り、段階的に考えていく方法です。複雑な問題を小さなステップに分解して、一つひとつ順番に考えていくんですね。

例えば、友達との大事な会議の準備をするとき、AIならこんな風に考えます:

  1. まず、会議の目的を明確にしよう
  2. 次に、誰が参加するか確認しよう
  3. 必要な資料を準備しよう
  4. 会議の流れを計画しよう
  5. 想定される質問を考えておこう

この「ステップ・バイ・ステップ」の考え方、実は私たち人間も無意識にやっていることなんです。でも、AIは意識的にこのパターンを使うことで、複雑な問題も整理して考えられるんですね。

2. 推論と行動の繰り返し(ReAct)—— 考えて、行動して、観察する

「推論と行動の繰り返し」は、「考える→行動する→結果を見る→また考える」というサイクルを回す方法です。

例えば、京都旅行のプランを立てるとき:

  1. まず「京都の観光スポットって何があるかな?」と考える(推論)
  2. 情報を調べる(行動)
  3. 「金閣寺は1時間、清水寺は2時間かかるんだな」と情報を整理する(観察)
  4. 「じゃあ効率的なルートを考えないと」とさらに考える(推論)
  5. 「宿泊先はどこがいいですか?」と質問する(行動)

このように、考えるだけでなく、必要な情報を集めながら、どんどん考えを深めていきます。まるで人間が誰かと会話しながら考えを発展させていくみたいですね。

3. 思考の木(Tree of Thoughts)—— いろんな可能性を考える

「思考の木」は、一つの道だけでなく、複数の可能性を同時に考える方法です。道が分かれるたびに新しい「枝」を伸ばし、最終的に最も良い道を選びます。

例えば、新しいスムージーの名前を考えるとき:

  • 健康・栄養重視の名前
    • 「ビタブースト」(ビタミン+ブースト)
    • 「ニュートリフレッシュ」(栄養+リフレッシュ)
  • 自然・オーガニック重視の名前
    • 「ピュアブレンド」(純粋さ+混合)
    • 「オーガニックウェーブ」(オーガニック+波)
  • ライフスタイル重視の名前
    • 「デイリーグロウ」(毎日+輝き)
    • 「バランスブリス」(バランス+至福)

これらを比較して、「デイリーグロウ」が一番良いかな?と決める感じです。人間も「あっちの道もあるけど、こっちの方がいいかな」と考えますよね。AIも同じように複数の可能性を検討するんです。

4. 自己省察(Self-Reflection)—— 立ち止まって振り返る

「自己省察」は、一度考えたことを批判的に振り返り、改善する方法です。いわば「待った、もう一度考え直そう」というステップです。

例えば、マーケティング戦略のプレゼン原稿を書くとき:

最初の案:「今回ご提案するマーケティング戦略は、ソーシャルメディアを活用したブランド認知度向上キャンペーンです…」

振り返り:「あれ、具体的な目標や数値が足りないな。ターゲット層も明確じゃないし、予算の話もしていない。」

改善版:「今回ご提案するマーケティング戦略は、20代から30代前半の都市部在住の環境意識が高い女性をターゲットとした、6ヶ月間で認知度を現在の15%から35%に向上させることを目標とするキャンペーンです…」

この「一度立ち止まって考え直す」能力は、AIの答えの質を大きく向上させます。人間でいえば「書いた後に見直す」作業みたいなものですね。

AIはこれらを組み合わせて考えている!

実際のAIは、これらの思考パターンを組み合わせて使っています。例えば、新しいケーキのアイデアを考えるとき:

  1. まず「思考の連鎖」でケーキの基本要素(ベース、フィリング、トッピング、味など)を整理
  2. 次に「推論と行動の繰り返し」で必要な情報(ターゲット層、提供シーン)を集める
  3. 「思考の木」で複数のアイデア(芸術的なケーキ、季節のフルーツを活かしたケーキなど)を考える
  4. 最後に「自己省察」でアイデアを評価し、改善する

こうして生まれたのが「四季の水彩画ケーキ」というアイデア。オーガニック素材を使った、季節ごとに変わる風景をケーキ上に表現する芸術的なケーキです。インスタ映えする美しさと健康志向を兼ね備えた、カフェにぴったりの商品ですね。

一つのアイデアが生まれるまでに、AIはこんなにもいろいろな角度から考えているんです。

人間の思考との共通点と違い

面白いことに、これらの思考パターンは、実は私たち人間の思考とよく似ています。人間も問題に直面したとき、段階的に考え(思考の連鎖)、情報を集めながら推論し(推論と行動)、複数の可能性を検討し(思考の木)、自分の考えを振り返ります(自己省察)。

でも決定的な違いもあります。人間の思考は無意識的で混ざり合っていることが多いのに対し、AIはこれらのパターンを明示的に使います。また、人間は感情や先入観の影響を受けやすいですが、AIはより客観的に考えられる可能性があります。

AIと人間が協力する未来

AIの思考パターンを理解することで、私たちはAIとより効果的に協力できるようになります。AIは大量の情報処理や複数の可能性の探索が得意で、人間は文脈理解や創造的なひらめきが得意。お互いの強みを活かせば、より良い問題解決が可能になります。

例えば、旅行計画を立てるとき、AIに「京都の主要観光スポットを効率よく回るルートを3パターン考えて」と頼めば、AIは「思考の木」を使って複数の可能性を探索します。そして、私たちはその中から自分の好みや状況に合ったプランを選べば良いんです。

また、レポートや企画書を書くとき、AIに「自己省察」してもらうことで、見落としていた視点や改善点を発見できるかもしれません。AIを「考える相棒」として使うと、私たち自身の思考も広がりますね。

まとめ:AIの思考を知ることの意味

AIの思考パターンを知ることは、単にAIを上手に使うためだけでなく、私たち自身の思考について考える機会にもなります。「AIはどう考えるか」という問いは、「人間はどう考えるか」「思考とは何か」という根本的な問いにもつながっているんです。

AIと人間の協働がますます重要になる今、AIの「頭の中」を理解することは、AIを効果的に活用するための第一歩。同時に、それは私たち自身の思考を見つめ直すきっかけにもなるでしょう。

異なる思考スタイルを持つ「考える相棒」としてAIと付き合うことで、私たちの可能性はさらに広がっていくはずです。あなたも今日から、AIとの対話を少し違った目で見てみませんか?

芝先 恵介

芝先 恵介

メンター|生成AIスペシャリスト

外資系業務ソフト会社を経て2002年に起業、代表に就任。2013年に会社を売却し、翌年からスタートアップや大企業の新規事業立ち上げ支援に尽力。大学や公的機関での非常勤講師、DXアドバイザー、中小企業アドバイザーとしても活躍中。現在は、(株)01STARTを設立し、新規事業開発や営業DXのコンサルティング、生成AIに関するセミナーに数多く登壇。

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