音声付き動画生成の時代到来 GoogleのVeo 3が起こすコンテンツ革命

音声付き動画生成の時代到来 GoogleのVeo 3が起こすコンテンツ革命

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スマホで何気なく見ているショート動画。TikTokやInstagramリールで流れてくる映像を見ながら、「こんな動画、自分でも作れたらなぁ」と思ったことはありませんか?そんな私たちの願いを叶えてくれそうな技術が、ついにGoogleから登場しました。その名も「Veo 3」—動画生成AIの世界に、音声という新たな魔法をもたらした最新ツールです。

2025年5月、Googleの年次カンファレンス「Google I/O 2025」で発表されたVeo 3は、これまでの動画生成AIが持っていた「無音」という最大の弱点を克服しました。テキストで「雨の日の街角で傘をさして歩く人」と入力すれば、雨音までついた動画が完成する—そんな未来が現実になったのです。

「無音時代」についに終止符!音声付き動画の衝撃

従来の動画生成AIを使ったことがある人なら分かると思いますが、どんなにリアルな映像が作れても、「音がない」という問題がありました。まるで昔のサイレント映画のように、どこか物足りない仕上がりになってしまうんですよね。

GoogleはVeo 3の発表に際し「ビデオ生成の無音時代に別れを告げましょう」と述べて性能をアピールしているように、この新機能は業界にとって本当に画期的な進歩です。

Veo 3が生成できる音声は実に多彩です。街中の交通音、公園の鳥のさえずり、キャラクター同士の対話はもちろん、紙がこすれる音、ダイナミックな効果音まで幅広くカバー。さらに驚くべきは、正確なリップシンクまで実現していることです。つまり、キャラクターが喋る動画を作れば、口の動きと音声がちゃんと同期しているんです。

実際に公開されたデモ動画を見ると、その完成度の高さに驚かされます。湯気や泡、茶漉しをくぐる液体の流れが見事再現されていて、沸騰音まで付くリアルっぷりは圧巻という体験談もあり、まさに「これ、本当にAIが作ったの?」と疑いたくなるレベルです。

実際に使ってみるとどうなの?料金と現実のギャップ

さて、気になるのは実際の使い勝手と料金です。現在、Veo 3を使うにはいくつかの方法があります。

最も高機能なのは月額249.99ドル(約3万8000円)のサブスクリプションサービス「Google AI Ultra」ですが、これはアメリカ限定。日本のユーザーは「Google AI Pro」(月額2,900円)でGeminiアプリ経由で利用できますが、機能は限定的です。

実際に使ってみた人の体験談を見ると、「映画のワンシーンみたい」「本当にカメラで撮ったみたい」という絶賛の声がある一方で、現実的な制限もあります。出力される動画の画質は720pと現在の基準では少し物足りなく、尺も8秒程度。また、利用回数にも上限があり、10回ほど使うと8時間程度使えなくなるという報告もあります。

さらに興味深いのは、評価が真っ二つに分かれていることです。「これはすごい!」と感動する人がいる一方で、「AIスロップ(AI特有のクセがある粗雑なコンテンツ)」と手厳しい評価をする専門家もいます。特にクリエイティブ業界の人たちからは、「芸術性が皆無」「粗悪映像の乱造機」といった辛辣な意見も出ています。

確かに、AI生成コンテンツには独特の「作り物感」があることは否めません。でも、一般の私たちにとっては、SNS投稿用のちょっとした動画を簡単に作れるツールとしては十分魅力的ではないでしょうか。

クリエイターの未来を変える?それとも脅かす?

Veo 3の登場で一番気になるのは、動画クリエイターや映像業界への影響です。GoogleはFlowという映画制作用AIツールも同時に発表しており、プロンプト一つで映画のようなクリップを連結して作品を作れるようになりました。

実際、Google I/O 2025のオープニングムービーは全編がVeo 3で生成されたもので、西部劇風の街並みを動物たちが練り回るファンタジー全開の内容でした。物理法則や文字表現も破綻なく表現できていて、Veo 3の底力を見せつけています。

しかし、これは同時に「人間のクリエイターは必要なくなるのか?」という不安も生み出します。確かに短時間で高クオリティな動画を作れるのは魅力的ですが、それが人間の創造性や雇用にどんな影響を与えるかは慎重に考える必要があります。

一方で、ポジティブな見方もできます。これまで予算や技術的な制約で諦めていたアイデアを形にできるようになったり、個人クリエイターが大企業並みの映像制作ができるようになったりと、創造性の民主化が進む可能性もあります。

ビジネスシーンでも注目 「伝える力」の民主化

Veo 3の影響は、エンターテイメント業界だけにとどまりません。特にスタートアップ企業にとって、限られた予算で自社プロダクトの価値を伝えるという課題を、低コストで解決できる可能性があります。アイデアを即座に魅力的な動画に変換し、投資家や顧客への説得力を劇的に高められるからです。

注目すべきは、この技術が「伝える力」の格差を縮小する点です。動画制作スキルより「何を伝えるか」という本質的な部分により集中できる時代がやってきました。あなたが経営者なら、自社のどんな体験を動画で見せたいですか?

まとめ:音声付きAI動画の時代がやってきた

Veo 3は確実に動画生成AIの新たなマイルストーンです。音声付き動画生成という技術的ブレークスルーは、SNSネイティブ世代にとって特に大きな意味を持ちます。完璧ではないにしても、手軽に映像コンテンツを作れる時代の到来は間違いありません。

月額数千円で誰でも映画監督になれる—そんな未来がもうすぐそこまで来ています。Veo 3が日本でも本格的に使えるようになる日が待ち遠しいですね。それまでは、デモ動画を見ながら、自分ならどんな動画を作ってみたいか想像を膨らませてみてはいかがでしょうか。


参考:ITmedia AI+、GIGAZINE、WEEL、Google公式ブログ等

芝先 恵介

芝先 恵介

メンター|生成AIスペシャリスト

外資系業務ソフト会社を経て2002年に起業、代表に就任。2013年に会社を売却し、翌年からスタートアップや大企業の新規事業立ち上げ支援に尽力。大学や公的機関での非常勤講師、DXアドバイザー、中小企業アドバイザーとしても活躍中。現在は、(株)01STARTを設立し、新規事業開発や営業DXのコンサルティング、生成AIに関するセミナーに数多く登壇。

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