AIが電話をかけまくる時代がやってきた!「電話=迷惑」になる日は近い?

AIが電話をかけまくる時代がやってきた!「電話=迷惑」になる日は近い?

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突然ですが、あなたは知らない番号からの電話に出ますか?最近、知らない番号を見ただけで「うわ、また営業電話か…」と思ってしまう人、きっと多いですよね。でも実は、その営業電話の世界に大きな変化が起こっているんです。

2025年5月29日、株式会社AIdeaLabが「AIテレアポくん」という新サービスをリリースしました。これ、一言で言うと「AI が人間の代わりに営業電話をかけまくってくれるサービス」なんです。しかも24時間365日、1日に数千件も電話をかけられるという…。聞いただけでちょっとゾッとしませんか?

AIテレアポの登場 ~人間よりも「人間らしい」営業マン?

従来のテレアポ業務って、本当に大変だったんです。まず人材確保が困難。営業電話をかける仕事は離職率が高く、新人を雇ってもすぐに辞めてしまう。教育にも時間とコストがかかるし、ベテランでも1日せいぜい100件程度の架電が限界でした。

ところが「AIテレアポくん」の登場で、この常識が一変しようとしています。このAIは商材や業界ごとのトークスクリプトを学習していて、相手の反応に応じて柔軟に会話ができるんです。しかも音声合成技術により、話し方の抑揚や間の取り方まで人間そっくりに再現。デモ音声を聞いた人からは「本当に人間みたい」という声も上がっているとか。

実際のところ、このAIの能力はかなり高度です。録音された音声を再生するのではなく、リアルタイムで相手の発言を理解して適切に応答。想定外の質問にも対応できるし、興味を示した顧客の情報は人間の営業担当にすぐ引き継がれます。つまり、AIが「ふるい」の役割を果たして、見込みの高い顧客だけを人間に渡してくれるわけです。

企業側から見れば、これは革命的。人件費を大幅削減できて、24時間稼働で効率も格段にアップ。採用や教育の手間もなくなります。でも、電話を受ける側の私たちにとっては…どうでしょうか?

営業電話の「迷惑メール化」が始まる?

ここで考えてみてほしいのが、迷惑メールの歴史です。インターネット初期には、メールといえば知人からの大切な連絡手段でした。でも技術の発達とコストの低下により、大量の迷惑メールが送られるようになり、今ではメールボックスの大半がスパムで埋まってしまうことも珍しくありません。

AIテレアポの登場で、同じことが電話でも起こる可能性が高いんです。これまで営業電話の数を抑えていたのは、実は人件費という「自然なブレーキ」でした。1件の電話をかけるのに人件費がかかるから、企業も厳選して架電していたわけです。

ところがAIなら、そのブレーキがほぼ外れてしまいます。AIdeaLabも「受電側の迷惑とならないよう時間帯を制限している」と説明していますが、これは各企業の良心に委ねられている部分。技術的には24時間365日、数千件の架電が可能なわけですから、悪用される可能性も十分あります。

迷惑メール業界では、送信側とフィルター技術のイタチごっこが延々と続いています。メールフィルターが賢くなれば、スパムメールもより巧妙になる。同じように、AIテレアポが普及すれば、電話の着信拒否機能やAI判定技術も発達するでしょう。でも、AIが「人間らしく」話せるようになればなるほど、本当の人間からの大切な電話と区別がつかなくなってしまいます。

最悪のシナリオを想像してみてください。毎日何十件ものAI営業電話がかかってきて、どれが本物の人間でどれがAIか分からない世界。考えただけでうんざりしませんか?

電話というコミュニケーション手段の終焉?

実は、この問題は若い世代ではすでに始まっています。Z世代の多くは、そもそも電話での会話を避ける傾向にあります。「電話は相手の時間を奪う」「LINEやメールの方が効率的」という価値観が定着しているんです。

AIテレアポの普及により、この電話離れがさらに加速する可能性があります。営業電話の増加により、「知らない番号=迷惑電話」という認識がますます強くなれば、人々は電話に出なくなるでしょう。

すでに多くの人が体験していることですが、宅配業者や病院からの大切な電話でも、知らない番号だと出ないという人が増えています。そして留守番電話を聞いてから折り返すか判断する。でも、AIが人間そっくりに話せるようになったら、留守番電話でも判断がつかなくなってしまうかもしれません。

さらに深刻なのは、ビジネスシーンへの影響です。これまで電話は重要なビジネスツールでした。緊急時の連絡、重要な商談のアポ取り、顧客との信頼関係構築など、電話ならではの価値がありました。でも「基本的に電話には出ません」が常識になってしまったら、こうしたビジネスコミュニケーションにも支障が出てきます。

皮肉なことに、AIが営業効率を向上させようとして開発された技術が、電話というコミュニケーション手段そのものを使えなくしてしまう可能性があるんです。これって、技術発展の副作用として非常に興味深い現象だと思いませんか?

未来予想図:AIと人間の共存は可能?

とはいえ、AIテレアポの技術自体は確実に進歩していくでしょう。企業にとってのメリットがあまりにも大きいからです。でも、だからこそ私たち受ける側も対策を考える必要があります。

一つの可能性として、「AI表示義務」のような規制が生まれるかもしれません。メールにスパム表示があるように、AI による通話には必ず識別表示を義務付ける、といった具合に。また、電話以外のコミュニケーション手段がより重要になってくるでしょう。チャットボット、メール、SNSダイレクトメッセージなど、相手のペースで確認できる非同期コミュニケーションツールの価値が再評価されるかもしれません。

一方で、本当に重要な電話連絡については、事前にメールやメッセージで「〇時頃お電話します」と予告する文化が定着するかもしれません。予告なしの電話は基本的に出ない、というのが新常識になる可能性もあります。

AIテレアポ技術の発展は止められませんが、その使い方次第で未来は変わります。企業の良識に期待したいところですが、過度に楽観的になるのも危険です。迷惑メールの歴史が証明しているように、技術的に可能なことは大抵誰かがやってしまうものです。

まとめ:変化の波に賢く対応していこう

AIテレアポの登場は、確実にコミュニケーションの風景を変えていくでしょう。企業の営業効率は向上するかもしれませんが、私たち一般消費者にとっては必ずしもハッピーな未来とは限りません。

でも、変化を嘆くだけではなく、賢く対応していくことが大切です。新しい技術に振り回されるのではなく、自分たちのライフスタイルに合わせてうまく活用していく。そんな柔軟性が、これからの時代には求められているのかもしれませんね。

次に知らない番号から電話がかかってきたとき、もしかしたらそれはAIかもしれません。そう思うと、なんだか未来がすぐそこまで来ている気がしませんか?

参考:ITmedia「AIが24時間365日休まず大量架電、『AIテレアポくん』登場」、AIdeaLab公式プレスリリース(2025年5月29日)

芝先 恵介

芝先 恵介

メンター|生成AIスペシャリスト

外資系業務ソフト会社を経て2002年に起業、代表に就任。2013年に会社を売却し、翌年からスタートアップや大企業の新規事業立ち上げ支援に尽力。大学や公的機関での非常勤講師、DXアドバイザー、中小企業アドバイザーとしても活躍中。現在は、(株)01STARTを設立し、新規事業開発や営業DXのコンサルティング、生成AIに関するセミナーに数多く登壇。

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