OpenAIとGoogleの驚きのタッグ!ライバル同士が手を組んだワケ

OpenAIとGoogleの驚きのタッグ!ライバル同士が手を組んだワケ
2025年7月11日

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2025年6月、AI業界に激震が走りました。ChatGPTで有名なOpenAIが、なんとGoogleのクラウドサービスを使うことになったのです。これまでライバル関係にあった2社が手を組むなんて、まるで漫画みたいな展開ですよね。一体何が起こったのでしょうか?

そもそもなぜこれが「驚き」なのか?

まず、なぜこのニュースがこんなに話題になっているのかを説明しましょう。

OpenAIとGoogleは、AI業界では完全にライバル関係にあります。OpenAIのChatGPTと、GoogleのGeminiは、まさに直接対決している競合サービス。さらに言えば、ChatGPTはGoogleの検索事業にとって最大の脅威とも言われています。これまでググるのが当たり前だったのに、最近は「ChatGPTに聞いてみよう」という人も増えていますからね。

そんな中で、OpenAIがGoogleのクラウドサービスを使うというのは、まるで「ライバル店のキッチンを借りて料理を作る」ようなもの。普通なら考えられない話なんです。

しかも、OpenAIはこれまでMicrosoftと深い関係にありました。MicrosoftはOpenAIに数十億ドルという巨額の投資をしていて、2024年1月までは、OpenAIはMicrosoftのAzureクラウドサービスだけを使っていたんです。それがなぜ、突然Googleと手を組むことになったのでしょうか?

AI業界の「電力不足」問題

実は、この驚きの提携の背景には、AI業界が抱える深刻な問題があります。それは「コンピューティング能力の不足」、いわば「電力不足」のような状況です。

ChatGPTのようなAIサービスを動かすには、とてつもない量の計算処理が必要です。AIを訓練するときも、実際にユーザーが使うときも、膨大なデータセンターのパワーが必要なんです。OpenAIの場合、2022年にChatGPTがリリースされて以来、利用者数が爆発的に増えています。2025年6月には、なんと年間売上が100億ドル(約1兆5000億円)に達したと発表されました。

これだけのサービスを支えるには、もはやMicrosoftのクラウドだけでは足りなくなってしまったのです。まるで急成長中のレストランが、既存のキッチンでは注文をさばききれなくなって、隣の店のキッチンも借りることにした、みたいな感じですね。

OpenAIは今年に入って、SoftBankやOracleと5000億ドル(約75兆円)規模の「Stargate」という巨大データセンタープロジェクトを発表したり、CoreWeaveという会社と数十億ドルの契約を結んだりと、必死に計算能力を確保しようとしています。さらには、自社専用のチップ開発も進めているそうです。

Googleにとっても「うまい話」

一方で、Googleにとってもこの契約は悪い話ではありません。むしろ、かなり「うまい話」と言えるでしょう。

Google Cloudは、AmazonのAWSやMicrosoftのAzureに次ぐ第3位のクラウドサービスプロバイダーです。2024年の売上は430億ドル(約6兆4500億円)で、Alphabet全体の売上の12%を占めています。でも、まだまだライバルに追いつくには時間がかかりそうな状況でした。

そこに、いま最も勢いのあるAI企業であるOpenAIが顧客として加わるというのは、Google Cloudにとって大きな宣伝効果があります。「あのOpenAIも使っているクラウドサービス」というのは、かなり強力なセールスポイントになりますからね。

しかも、GoogleはTensor Processing Unit(TPU)という独自のAI専用チップを持っています。これまでは主に社内で使っていたのですが、最近は外部の企業にも提供するようになりました。AppleやAnthropic(OpenAIの元社員が立ち上げた会社)なども、すでにGoogleのTPUを使っているそうです。

「敵の敵は味方」ではなく「商売は商売」

この提携について、業界アナリストからは「somewhat surprising(やや驚き)」という声が上がっています。でも同時に、「これは競争よりもビジネスの現実を優先した結果」という見方も強いんです。

Tom’s Guideの記事では、関係者の「これは競争の話ではなく、ハードウェアを稼働させ続けることの話だ」というコメントが紹介されています。つまり、クラウド事業者にとっては、データセンターを満稼働させることが何より重要で、顧客が誰であるかは二の次ということなんですね。

実際、GoogleのSundar Pichai CEOは以前から「OpenAIがGoogleの長期的なビジネスを脅かすことはない」と発言していました。確かに競争はあるけれど、それぞれが違う分野で強みを持っているし、市場全体がまだまだ成長段階なので、共存は十分可能だという考えなのでしょう。

AI時代の新しい競争ルール

この提携が示しているのは、AI時代の競争が従来とは違ったルールで行われているということかもしれません。

これまでのIT業界では、「囲い込み」が重要でした。自社のサービスだけを使ってもらい、他社には絶対に流れないようにする戦略ですね。でも、AIの世界では、必要な計算能力があまりにも巨大すぎて、もはや1社だけでは賄いきれません。

OpenAIは今後も、Microsoft、Google、Oracle、CoreWeaveなど、複数のクラウドプロバイダーを使い分けていくことになりそうです。まるで、電気を複数の電力会社から買うように、クラウドサービスも「複数購入」が当たり前になるかもしれません。

これは、AI企業にとってはリスク分散になりますし、クラウド事業者にとっては新しい競争の形を意味します。「独占」よりも「サービスの質」や「価格競争力」で勝負する時代になってきているのかもしれませんね。

今後の展開は?

この提携がAI業界にどんな影響を与えるかは、まだわかりません。でも、いくつかの変化は確実に起こりそうです。

まず、他のAI企業も同じような「マルチクラウド戦略」を取るようになるでしょう。1つのクラウドサービスに依存するリスクを避けるために、複数のプロバイダーを使い分ける企業が増えそうです。

また、クラウド事業者間の競争も激化しそうです。GoogleがOpenAIを顧客として獲得したことで、AmazonやMicrosoftも負けじとAI企業の争奪戦を繰り広げるかもしれません。

そして、最終的には私たちユーザーにとってもプラスになるはずです。競争が激しくなれば、AIサービスの質が向上したり、価格が下がったりする可能性がありますからね。

おわりに:AI時代の「大人の事情」

OpenAIとGoogleの提携は、一見すると「えっ、ライバル同士なのに?」と驚くニュースですが、よく考えてみると、とても合理的な判断なんです。

OpenAIは必要な計算能力を確保でき、Googleは大口顧客を獲得できる。お互いにメリットがあるWin-Winの関係というわけですね。競争しながらも協力する、これがAI時代の新しいビジネスのやり方なのかもしれません。

私たちの日常でも、似たようなことはありますよね。普段はライバル関係にある会社同士が、特定のプロジェクトでは協力したり、競合する店舗が同じ商業施設に入っていたり。それと同じで、AI業界でも「競争と協力の両立」が当たり前になってきているのでしょう。

今回の提携をきっかけに、AI業界がどう変化していくのか、今後も注目していきたいと思います。私たちの生活をより便利にしてくれるAIサービスが、どんどん進化していくことを期待しましょう!


参考:Reuters、9to5Google、Investopedia、CNBC、Tom’s Guide、ODSC – Open Data Science ほか各種報道

芝先 恵介

芝先 恵介

メンター|生成AIスペシャリスト

外資系業務ソフト会社を経て2002年に起業、代表に就任。2013年に会社を売却し、翌年からスタートアップや大企業の新規事業立ち上げ支援に尽力。大学や公的機関での非常勤講師、DXアドバイザー、中小企業アドバイザーとしても活躍中。現在は、(株)01STARTを設立し、新規事業開発や営業DXのコンサルティング、生成AIに関するセミナーに数多く登壇。

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